結論を先に
- 身長キーワード(
extremely tall woman/8 feet tall woman)では「周囲の建物より大きい人物」は作れなかった。 15枚中0枚。効果はフレーム占有率と頭身の増加にとどまる。 8 feet tall womanの数値指定は頭身の増加が3枚中3枚で確認でき、形容詞版よりわずかに効いた。 ただし巨躯にはならない。low angle shot from ground level, looking up at herはカメラを下げなかった(3枚中0枚)。 代わりに3枚中3枚で被写体が空を見上げる画になった。looking upが被写体の動作として解釈されている。- 八尺様らしさが最も出たのは全部盛り条件のseed 43。 高いフレーム占有率+やや下からの画角+見上げる白帽子の女、という組み合わせが偶発的に成立した。
- 【追試】「人物を大きくする」のではなく「町を小さくする」逆転アプローチが3枚中3枚で成立した。 半スケールのミニチュアの町を指定すると、屋根が肩〜胸の高さに来る「家より大きい女」の画が安定して出る。
- 【追試2】ミニチュア指定に伴うジオラマ調は、経年劣化の語彙で上書きできる。
weathered wood, aged mossy roof tiles, rusty gutters+documentary photographの追加で、巨大スケールを保ったまま実在の古い町の質感になった(3枚中2枚でスケール維持)。逆にminiatureを外すとスケール自体が消える。
本記事は妖怪シリーズの第1弾。口裂け女編、雪女編も併せてどうぞ。
八尺様というモチーフ
八尺様は「八尺(約240cm)の長身の女が白いワンピースと帽子姿で現れる」という都市伝説の妖怪。画像生成の題材として見ると、要素は次の3つに分解できる。
- 長身・威圧感 — 本記事の検証対象
- 白いワンピース+つば広帽子 — 衣装指定で安定して出せる
- 田舎の路地 — ロケーション指定で安定して出せる
問題は1の「長身」だ。1枚の画像の中に比較対象となる他の人物がいない場合、身長をどう表現するかは自明ではない。身長キーワードとカメラアングルの2軸で検証する。
実験設計
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モデル | z-image-turbo(6B、写実特化蒸留) |
| ステップ | 8 |
| サンプラー | euler / ddim_uniform |
| CFG | 1.0 |
| サイズ | 1024x1024 |
| seed | 42, 43, 44 固定 |
| 各条件 | 3枚 |
| 合計 | 本編5条件 + 追試8条件 × 3 = 39枚 |
ベースプロンプト
条件一覧
| 条件 | 変更内容 | 変数の種類 |
|---|---|---|
| A00: コントロール | なし | — |
| A01: tall | extremely tall woman を追加 | 身長形容詞 |
| A02: 8ft | 8 feet tall woman を追加 | 身長の数値指定 |
| A03: lowangle | low angle shot from ground level, looking up at her を追加 | カメラアングル |
| A04: combo | A01 + towering over the viewer + A03 を同時追加 | 複合 |
A04は複数要素の同時追加のため、個別要素の因果関係には言及しない。
追試(B群)は本編の結果を受けて後日追加した3条件。seedは同じ42, 43, 44を使用している。
| 条件 | 変更内容 | 変数の種類 |
|---|---|---|
| B01: 2.5m | 2.5 meters tall woman を追加 | 身長の数値指定(メートル) |
| B02: window | her head level with the second floor windows of the houses を追加 | 環境基準の身長指定 |
| B03: mini | 舞台を a half-scale miniature japanese town, small old wooden houses and utility poles built at half size, rooftops reaching her shoulder height に変更 | 環境スケール |
追試第2弾(C群)は、B03で成立した巨大スケールに伴う「ジオラマ調の質感」を除去するための5条件。seedは同じ42, 43, 44。
| 条件 | 変更内容 | 狙い |
|---|---|---|
| C01: minilow | B03 + low angle | 俯瞰カメラの是正 |
| C02: lowtown | miniature の語彙を捨て、old japanese town with low single-story wooden houses, weathered tiled rooftops reaching her shoulder height, aged walls and rusty gutters | 実在する低い町として記述 |
| C03: lowtown_la | C02 + low angle | 複合 |
| C04: minireal | B03 + weathered wood, aged mossy roof tiles, rusty gutters + eye level shot, documentary photograph | ミニチュア維持+経年ディテールで質感上書き |
| C05: aboveroof | C02系 + her head and shoulders rising above the weathered tiled rooftops | 人物と屋根の関係を直接記述 |
各条件の検証
A00: コントロール
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 3枚とも古い木造家屋の並ぶ路地に白ワンピース+白帽子の女性が立つ構図で、シーンの再現度は高い。身長は3枚とも標準的で、カメラはアイレベル。seed 42は正面向きで画面中央、seed 43は歩行中、seed 44は引きの全身構図になった。
A01: extremely tall woman
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 3枚中2枚(seed 42, 43)でコントロールより被写体のフレーム占有率が上がり、胴と脚が長めのプロポーションになった。ただし周囲の家屋や電柱との対比では通常身長の範囲に収まっており、「大きい人物」にはなっていない。seed 44は逆にコントロールとほぼ同じ引き構図で、厚底サンダルが追加された。
A02: 8 feet tall woman
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 3枚とも頭身が上がり(特にseed 44は頭が小さく9頭身近い)、被写体がフレーム内で大きめに描かれた。形容詞の extremely tall より変化の一貫性は高い。それでも建物と比較して大きいという描写は3枚中0枚。副作用として衣装が変化し、seed 42はノースリーブのキャミソールワンピース、seed 44は七分袖になった。
A03: ローアングル指定
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 予想外の結果。カメラ位置の低下は3枚中0枚で、代わりに3枚中3枚で被写体が顔を上げて空を見上げる画になった。「looking up at her(彼女を見上げる)」という視点の指定が、被写体自身の「見上げる」動作として反映されたと考えられる。カメラアングル6種比較では low angle 単独で3枚中3枚カメラ位置が下がっており、今回の失敗はフレーズの違いによる可能性がある(同一シーンでの直接比較はないため、断定はしない)。
A04: 全部盛り
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 3枚中3枚でやはり被写体が上を見上げる。一方でseed 42と43はフレーム占有率が大きく上がり、seed 43は膝下からのやや低い視点+9頭身近いプロポーション+見上げる白帽子の女という組み合わせで、5条件15枚の中で最も八尺様らしい威圧感のある1枚になった。seed 44は通常サイズに戻り、袖にフリルが付くなど衣装の変化が出た。
追試: 数値・環境基準・ミニチュアの町
B01: 2.5 meters tall woman
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: メートル数値でもフィート数値(A02)と同傾向。3枚ともフレーム占有率と頭身は上がるが、周囲の家屋との対比では通常身長の範囲で、「家より大きい」描写は3枚中0枚。副作用として seed 42 は明るい昼の景色+ノースリーブに変化した。
B02: 2階の窓と同じ高さに顔
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 「頭が2階の窓の高さにある」という環境基準の指定は3枚中0枚で身長に反映されなかった。代わりに、3枚中2枚(seed 42, 44)で2階の窓が画面内に大きく写り込む構図に変化した。「2階の窓」という語が人物のサイズではなく、画面に含める要素として解釈されたとみられる。
B03: 半スケールのミニチュアの町
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 本記事で唯一「家より大きい女」が成立した条件。3枚中3枚で周囲の家屋が人物より小さく描かれ、屋根はおおむね腰〜肩の高さに来る。人物のサイズを上げるのではなく世界のスケールを下げる逆転アプローチが機能した。副作用として3枚ともやや俯瞰のカメラになり、家屋のディテールがジオラマ的(均質な瓦・整いすぎた配置)になる。「本物の町にいる巨大な女」というより「ミニチュアの町に立つ女」に見えるかは画像によって揺れがある。
追試2: ジオラマ調の除去
B03のジオラマ調の原因を「俯瞰カメラ」「miniatureという語彙の質感プリオール」の2つに分解し、5条件で切り分けた。
C01: ミニチュア + low angle
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: low angle は3枚中0枚で効かず、カメラは俯瞰のまま。巨大スケール自体は3枚とも維持されたが、ジオラマ調も残った(seed 43はやや実在寄り)。カメラアングル比較ではプールサイドで3枚中3枚効いた low angle が、このシーンでは通らない。ミニチュア俯瞰という強い構図プリオールに引っ張られている可能性がある(推測ではあるが)。
C02: 「実在する低い町」として記述
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 実在感は3枚中3枚で完全に戻った。風化した木材・錆びた雨樋が描かれ、本物の古い町並みに見える。しかし交換条件としてスケール効果が消えた。「屋根が肩の高さ」は3枚中0枚で、人物は通常身長に戻っている。miniature の語彙を捨てるとスケールも一緒に捨てることになる。
C03: C02 + low angle
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: C02と同傾向で、通常スケールの実在の町。low angle はここでも3枚中0枚で効かなかった(今回の路地シーンでは計6枚中0枚)。
C04: ミニチュア維持 + 経年ディテールで質感上書き
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 追試2の当たり条件。3枚中3枚で瓦に苔が乗り、木材が風化し、電柱が錆びた「実在する古い町」の質感になった。B03のジオラマ調(均質な瓦・整いすぎた配置)は解消。巨大スケールはseed 42と43で維持され(軒先が腰〜胸の高さ)、seed 44はスケールが弱まって通常身長寄りになった。eye level shot は効かずカメラは俯瞰のままだが、苔むした屋根越しに見下ろす構図はかえって「町を見下ろす存在」の画として機能している。
C05: 人物と屋根の関係を直接記述
| seed 42 | seed 43 | seed 44 |
|---|---|---|
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観察: 「頭と肩が屋根の上に出ている」という関係の記述は3枚中0枚で無視され、実在の町並みの中の通常身長の女性になった。B02(2階の窓の高さ)と同じく、実在の町という文脈では人物と建物のサイズ関係の指定が通らないことが再確認された。
条件間の比較(seed 43)
| コントロール | 8 feet tall | 全部盛り |
|---|---|---|
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被写体のフレーム占有率と頭身は右に行くほど増えるが、いずれも「建物と比べて大きい」描写にはなっていない。
考察
相対的な身長は1枚では表現されにくい
身長キーワードの効果は「プロポーションの変化(頭身増)」と「フレーム占有率の増加」として現れ、背景の建物・電柱との相対サイズには反映されなかった。単位を変えても(feet→meters)、環境基準で指定しても(2階の窓の高さ)この傾向は変わらなかった。同一フレーム内に比較対象となる人物を置いた場合にどうなるかは今後の検証課題。
人物を大きくできないなら、世界を小さくする
追試B03で唯一成立したのは、人物側ではなく環境側を「半スケールのミニチュア」と指定するアプローチだった。相対サイズの表現は「大きい人物」としては学習されていなくても、「小さい建物群+通常の人物」としては出力できるとみられる。八尺様のような「町より大きい存在」の画作りには現状これが最短ルートになる。
ジオラマ調の正体は「miniature」の質感、対策は経年ディテールの明示
追試2の切り分けで、ジオラマ調は miniature という語彙が連れてくる質感(均質な瓦・整いすぎた配置・作り物めいた照明)だとわかった。miniature を外せば質感は直るがスケールも消える(C02, C05)。有効だったのは、miniature を残したまま weathered wood, aged mossy roof tiles, rusty gutters と経年劣化を明示し、documentary photograph を添えるC04で、実在の古い町の質感と巨大スケールが3枚中2枚で両立した。スケールの語彙と質感の語彙は別々に制御できる。
巨大スケールの画作りレシピ(現状の結論)
スケールは「ミニチュアの町」で作り、質感は経年ディテールで実在に引き戻す。この2段構えが39枚を通しての結論となる。なおカメラ指定(low angle / eye level shot)はこの構図では計9枚中0枚で効かなかった。
視点の指定は短いフレーズで
looking up at her は6枚中6枚(A03+A04)で被写体の見上げ動作に化けた。誰の動作かが曖昧な句は被写体に束縛されやすい。カメラ位置を下げたいだけなら、既検証の low angle 単独指定が現状の安全策となる。
八尺様再現の現実解
長身を直接指定するより、「数値指定で頭身を上げる+フレーム占有率を上げる+低アングル」の組み合わせで「大きく見える画」を作るのが現実的。今回のベスト(A04 seed 43)はその偶発的な成功例で、再現性の確保が次の課題になる。
メモ: 意図とは違う出力だが、白帽子の女が無人の路地で一斉に空を見上げている3枚は、それはそれで不穏な画になっていた。ホラー文脈では「見上げる」誤変換も使い道がありそうだ。
まとめ
| 手法 | 長身効果 | 副作用 |
|---|---|---|
extremely tall woman | フレーム占有率が微増(3枚中2枚) | 衣装ディテールが変化 |
8 feet tall woman | 頭身増(3枚中3枚)、巨躯は0枚 | 衣装が袖なし等に変化 |
low angle shot from ground level, looking up at her | カメラ低下は0枚 | 被写体が見上げる(3枚中3枚) |
| 全部盛り | フレーム占有率が大幅増(3枚中2枚) | 見上げ顔(3枚中3枚) |
2.5 meters tall woman | 頭身増・占有率増、巨躯は0枚 | 昼景化・衣装変化(1枚) |
| 2階の窓の高さ指定 | 身長への反映は0枚 | 2階の窓が構図に入る(3枚中2枚) |
| 半スケールのミニチュアの町 | 「家より大きい女」が3枚中3枚 | 俯瞰化、ジオラマ調の質感 |
ミニチュア + low angle | スケール維持(3枚中3枚) | low angle無効、ジオラマ調残存 |
| 実在の低い町として記述 | スケール消失(0枚) | なし(実在感は完全復帰) |
| ミニチュア + 経年ディテール | スケール維持(3枚中2枚)+ 実在の質感(3枚中3枚) | カメラは俯瞰のまま |
| 頭が屋根の上(関係記述) | スケールへの反映0枚 | なし |









































